狙いから実践例までをまとめたテスト作成に欠かせぬ1冊。
こんにちはKaiです。今日は書評コーナーです。月1で紹介できたらいいなぁと思っていましたが、無事叶わず4月です笑。
今日の本
日々の業務に追われながら作るテスト。教科書のテスト問題データを活用すると狙いとは違ったものになってしまうこともあります。
一方で自分で作ると自身が受けてきたテストに基づくことも少なくなく、実はその形式に根拠がないことも。「あれ?じゃあ何に基づいてどんなテストを作れば良いの?」となるのも無理ありません。僕もこの本に出会う前はそう思っていました。
そこで今回紹介するのは、靜哲人さんの英語テスト作成の達人マニュアルです。
本のタイトル:英語テスト作成の達人マニュアル
著 :靜 哲人
出版社 :大修館書店
本の長さ:293ページ
この本はタイトルの通り、英語テスト作成の達人になるための本でこんな方におすすめです。
・教師
・ロジカルに英語のテストを作りたい
・何のためにテストを実施するのか知りたい
英語テストの本ではありますがテストそのものを科学しているので、他の教科の先生が読んでも知的財産が富む、そんな本です。
見どころ ・ 共感
僕がこの本をおすすめしたいポイントは次の4つ。
1.テストの基本特性に触れている
2.テストの性質に触れている
3.和訳問題や総合問題の課題を明確にしている
4.テスト案を提示している
では早速見ていきましょう!
1.テストの基本特性
この本を推す最も大きな理由の1つが、この「テストとは」から論じている点です。
昨今、テスト作成の本はたくさん出ています。そのテクニックは参考になるものも多いのですが「何を測るか」という根幹が不明瞭だと「見た目が良く、バリエーションも豊富でおもしろいけど何を測っているか曖昧なテスト」になってしまいます。
その上で必須知識の1つがテストの分類。テストには2種類あります。それが熟達度テストと到達度テストです。それぞれの特徴は以下の通り。
・熟達度テスト:能力そのものを測定するテスト
・到達度テスト:能力の身長を測定するテスト。
大切なのは、どちらの分類になるかによって測る能力が違う点。一般的に定期テストは到達度テストに分類されます。学んだ内容をどこまで理解しているかを測るテスト、これを前提にするだけでテストはガラッと姿を変えます。
2.テストの性質
テストには信頼性・妥当性・実用性・波及効果という性質があります。
信頼性とは、その問題によって測られた能力が信頼できるかどうかです。例えば10回テストを実施したときの解答が毎回同じであれば、そのテストは信頼性が高いと言えます。したがって選択問題は信頼性が高い傾向にあります。
妥当性とは、その問題によって測りたい能力が本当に測れているかどうかです。一般に記述問題が妥当性に富むと言われています。
実用性とは、作成・実施・採点といった運用が現実的かどうかです。信頼性と妥当性を高めたテストを実施するのに半年かかります!といったらどれほど充実したテストだったとしても定期テストには使えません。
波及効果とは、そのテストに伴ってもたらされる影響のことです。例えば「単語帳の3章から選択形式で英訳の単語テストを実施」と聞いて英作文の対策をする生徒はいません。単語帳の2章を勉強する生徒もいないでしょうし、3章の単語のスペリングを覚える生徒も少ないでしょう。
2.和訳問題や総合問題の課題を明確にしている
英文和訳はだめだと、まるで手のひらを返したように批判される今日この頃ですが、なぜだめなのでしょう。本書は次の3つを要因として解説しています。
1.時間の浪費
和訳では
①英文を読む
②その意味を理解
③日本語に直すための情報整理
④実際に訳を書く
これらが求められます。これは解答に費やした時間の大半が英語の理解とは直接関係ない作業となっています。これが時間の浪費と述べられる理由です。
2.波及効果
次に、先ほどの波及効果。100語/分で英語を読む生徒が1時間勉強した場合、読んで理解するだけなら6,000語の英語に触られる一方で和訳の勉強をした場合、語数は数百語まで落ち込みます。
3.理解度の測定の難しさ
そして、理解度の測定の難しさ。採点者は和訳そのものではなく、その質から英文の理解度を判定しなければいけません。下の2つはどちらが良いのでしょう。
①構文の取り違えはなくとも日本語としての不自然さがあるもの。
②要はこういうことだということを理解した意訳。
“実は多くの高校教師には確信がなく、結果「正確で、かつ自然な訳文を書くのがよい」などとわかったようなわからないようなほとんど不可能なことを言って学習者を煙に巻かざるを得ない事態が起こる。”と筆者は述べています。
言い得て妙、僕自身、耳が痛くなりました。総合問題も同じように論理的に課題点を追求しています。なぜ適切でないのかが明確で、非常に説得力のあるパートです。
3.テスト案を提示している
本書の魅力4つ目は、みっちり記載されたテスト案です。解答欄までしっかりと提示されています。
これらは個人的にもテスト作りのイロハを網羅していると思います。文章問題では、1つの文章につき1種類が望ましいが実用的ではないので問題の種類を増やした。この並び替え問題は日本語の語順で提示することで、日本語の語順では間違っていることを示唆している。など、すべての問題の意図を説明できるようになるからです。
「問題の意図がわからない」と他の先生にコメントされたときも、明確に答えることができるため「じゃあこういう風にした方が、より効果があるんじゃないかな」と一段深いアドバイスをもらうことも可能です。
最後に
いかがでしたか。
今回は英語テスト作成の教科書とも言える存在、「英語テスト作成の達人マニュアル」を紹介しました。
この本を読んだとき英語力がどのくらい伸びたかを測るテストとして、いかに自分のテストが安直だったかと反省しました。実は僕が大学院で学んでいる内容にも通じるところがあり、今なおその凄さを実感しています。より良いテスト作りの入口として一層おすすめです。
難点を挙げるとしたら、文献寄りの本なので少し読みにくさを感じる部分があることですが、それを乗り越えれば魅力的なテストを作ることができると思って頑張りましょう!
是非ご一読ください。では。
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