ども、Kaiです。今日は久しぶりの書評コーナー。
年度が新しくなり、職場も気持ちも心機一転。「今年度はちゃんと学びたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。そんな方に紹介する本がコチラ。
本のタイトル:学びとは何かー〈探究人〉になるために
著 :今井むつみ
出版社 :岩波新書
本の長さ :256ページ

前任校に、図書館の教員の月間利用率を大きく引き上げていると言っても過言でないくらい本を読む先生がみえました。そんな彼に紹介してもらえたのが今井先生。本書は、「学び」を“知識の獲得”ではなく“探究のプロセス”として捉え直す一冊です。こんな方におすすめです。
・記憶を科学したい方
・「知識・批判的思考とは」を知りたい方
僕がこの本をおすすめしたいポイントは次の2つ。
1. 感覚が言語化されている
2. 文章表現が美しく、スマートに整っている
1. 「学び」へのメタ的な切り口
本書では、馴染みのある知見や経験が科学されている点で、思考の整理に大きく貢献してくれます。
たとえば、絶対主義、相対主義、評価主義。これらをかなりざっくばらんにまとめると、
絶対主義とは、知識は「正しい/正しくない」に二分され、世の中から独立しているという捉え方。
相対主義とは、知識は解釈次第であり、多様な仮説や理論は人それぞれという捉え方。
評価主義とは、知識と考えの違いを理解していると言えるモノの見方。
となります(僕の理解が正しければ。)多くの人は相対主義で止まりがちですが、本書はその先にある評価主義へと読者を導いてくれます。この章で僕は、自分が相対主義と評価主義の境界線を感覚的にしか理解していなかったと思い知りました。
本書における具体的な話は、上記のような例の他にも、ミラーニューロン、エピステモロジー(認識)といった概念的な切り口で展開されています。
今井先生の視点はソシュールの構造主義と重なる部分も多く、関係性によって言葉の意味が決まるというベースが少なからず読み取れます。ただ多様な切り口から認知科学の領域まで踏み込んでいる点に“ポスト感”がただよっていて面白いです。
2. 咀嚼して味わう文章が豊富
本書の内容は、どの層も楽しめるよう工夫されています。が、正直に言うと、個人的には初見で「ん?」となり、改めて文を読むと「あ〜なるほど」と頷く文章も少なくありません。たとえば、
“「記憶力がよい」人は、・・・訓練によって、入ってくる情報を後から想起しやすい形で記憶できる技を持っている人なのである (p.15)”
“自分で仮説を考え、実験をデザインし、データを取って分析し、吟味し、論を構築し、それを評価する。「批判的思考」はこのようなプロセスを何度も繰り返し経験することによって初めて体得できる(p165)”
のように概念的な話をまとめています。新書で扱うには手に余るハズの内容を、上記のように洗練された言葉を並べることで文章を美しく整えているんです。
表現は「専門的で複雑すぎて、わけわからん」と「速読で十分レベル」の中間を攻めており、絶妙な文です。「ん?」となることがあるけど、読み諦めるには早いレベルの文章。
これがアクセントとなり、読み飽きることがありません。
また、熟達すると見えてくる弁別力を審美眼と表現しています。何気ない部分に言葉のセンスが光るのも本書の魅力です。
最後に
いかがでしたか。
今回は今井みつみ先生の『学びとは何かー〈探究人〉になるために』を取り上げました。彼女の著書を何冊か読みまして、最も感銘を受けた1冊でした。
学びや言葉の習得に関心がある方にはドンピシャですが、そうでない方には少し小難しいかもしれません。そんな方には同著者の『AIにはない「思考力」の身につけ方 ―ことばの学びはなぜ大切なのか?』もお薦めです。

こちらは今回紹介した本よりもはるかにわかりやすく、内容もライト。なんなら本書と一緒に紹介しようか迷ったくらいの良書です。
個人的には両方読んで、読者層に合わせて変現する彼女の文章の魅力を味わうのもお薦めです。是非、ご一読ください:)では。
本のタイトル:学びとは何かー〈探究人〉になるために
著 :今井むつみ
出版社 :岩波新書
本の長さ :256ページ


コメント